Dainese
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ストーリーズ

MotoGPの技術が海へ──Daineseが生んだアメリカズカップ用プロテクション

公開日:2026年2月7日
執筆者:ダイネーゼAGVジャパン編集部

サーキットで300km/hを優に超えるMotoGPマシンと、アメリカズカップに出場する全長25メートルのシングルマスト艇。この2つに共通点はあるのでしょうか。

それぞれの分野で技術進化の最前線にあり、特別な準備と高度なスキルを必要とし、長年にわたり何百万ものファンを魅了してきた存在であること以外には……一見すると何もないように思えます。しかし実際には、想像以上に多くの接点があります。例えば、40ノット(約80km/h)で海に投げ出されることは、アスファルトに叩きつけられるのと同じで、サーキットでのハイサイド転倒と同等のダメージを引き起こす可能性があるのです。

2016年、Dainese本社に一本の電話が入りました。電話の主は、Emirates Team New Zealandのテクニカルアドバイザーであり、元ルナ・ロッサのスキッパーでもあるマックス・シレーナでした。

彼は熱心なバイク愛好家で、「スピード・デーモン」であるDaineseをよく知っています。そして、ヴィチェンツァには、自分とチームを守る手助けができる存在がいることを確信していたのです。

アメリカズカップに臨むセーリングチームの走行シーン

Daineseの新たな挑戦

限界を押し広げる、新たなニーズ

セーリングのニーズ

このシナジーは、ごく自然に生まれました。Daineseが新たなスポーツ分野にプロテクションを持ち込むのは、今回が初めてではありません。

セーリングの世界では、これまでほとんど誰もこの方向性を本気で考えてきませんでした。しかし、艇の性能が向上するにつれてスピードは増し、それに伴いリスクも高まります。スポーツが進化するためには、物理法則に挑むマシンだけでなく、アスリート自身にも技術的なサポートを提供することが必要なのです。

1970年代から蓄積されてきた技術と経験は重要ですが、それ以上にアプローチが決定的です。すでに存在するものを出発点とし、セーラーたちが求めるプロテクション性能へと発展させていくことができます。

DaineseとEmirates Team New Zealandは、スキーやバイクのアスリートが採用しているあらゆるソリューションを研究し、海上で戦うアスリートの特有のニーズに合わせて進化させるための確かな土台を探しました。

新プロテクターの開発

柔軟性、軽さ、コンパクトさを考えると、ソフトプロテクターが最適な選択肢に見えました。出発点として選ばれたのは、ダウンヒル用プロテクティブベストであるRhyolite Safety Jacketです。

軽量でエルゴノミクスに優れ、動きを妨げません。いくつかのサンプルは直接ニュージーランドへ送られ、どこを最適化できるかを理解するため、すぐにテストが行われました。

浮力の課題

新製品が直面する課題

衝撃吸収は、Daineseが常に取り組んできたテーマのひとつです。しかし最初の大きな課題は浮力でした。これはレーシングボートのクルーにとって極めて重要な要素であり、バイカーには求められないものです。

Emirates Team New ZealandとイタリアにあるDaineseのR&D部門はチームとして協力し、バックプロテクターの内側と胸部にフローティングパッドを配置するという解決策を導き出しました。

フィット感と自由な動き

この改良の後に立ちはだかった最大の課題は、最適なフィット感と自由な動きを両立させることでした。高性能なプロテクターを作ること自体は難しくありませんが、安全性、軽さ、快適性を同時に実現するには、より深い研究と高度な技術活用が必要です。

これらの目標を達成してこそ、世界で最も要求の厳しいトップアスリートに製品を提供できます。チーム用の新しいベストは、各選手に合わせたテーラーメイドのハンドメイドで製作されました。こうして、アメリカズカップのために初めて開発されたプロテクティブベスト「Sea-Guard」が誕生したのです。

Sea-Guardを着用したセーリング中の選手

Sea-Guardの初期バージョンには、MotoGPスーツに着想を得たバックプロテクションハンプが備えられていました。この場合、主な特徴は空力性能と浮力です。

さらに、そのハンプ内部には通信システムや酸素ボンベを収めるスペースも確保されていました。レース環境での数々のテストを経て、後のバージョンでは異なるソリューションが選択され、調整が加えられていきます。

ハンプはハイドレーションバッグに置き換えられ、選手は休憩を取ることなく水分補給が可能になりました。これにより、集中力と身体効率を最高の状態で維持できます。

一方で、クルーには酸素ボンベ、チームメイトやレースディレクターと連絡を取るためのインカム、そして緊急時にロープやネットを切断するナイフが不可欠です。ハンプを廃した後、それぞれの装備専用のポケットが新たに設けられ、動きやすさを損なうことなく、容易にアクセスできる最適な位置が選ばれました。

Sea-Guardの外観と装備配置

Sea-Guardの成果

Sea-Guardの勝利

DaineseのSea-Guardを装備したEmirates Team New Zealandは、Oracle Team USAとのアメリカズカップ決勝に臨み、勝利を収めました。

これは、進化し続けるスポーツにおける新たなニーズをいち早く見抜いた、世界的エクセレンスによるビジョンの物語です。

モーターサイクルとセーリングは、結局のところ、そう遠い存在ではないのかもしれません。

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ダイネーゼAGVジャパン編集部

ダイネーゼAGVジャパン編集部は、イタリア発のモーターサイクルウェアブランド「Dainese(ダイネーゼ)」およびヘルメットブランド「AGV(エージーブイ)」の日本正規輸入元として、製品情報・アスリートのインタビュー・ブランドの今を発信する編集チーム。 ビギナーからエキスパートまで、ライダーの安全性を最優先にした情報提供を行っています。

2026年2月7日公開
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